小児科ブログ

私のおすすめ育児書

2022/06/21

もともと、乱読多読、活字中毒です。大学受験を控えた高校3年生の夏、勉強の場を図書館に設定したのが運の尽き。書庫の本を読み漁ってしまい、夏休み明けの模試では背筋が凍るような点数を叩き出しました。
さて、最近の情報源はすべてインターネットという親御さんも多いと思いますが、書物から得られる情報もいいですよ。私のおすすめ育児書をご紹介したいと思います。小児に関わるみなさんにもおすすめです。


1. 定本 育児の百科 大型本 松田 道雄

1967年に刊行された育児本の名著です。松田道雄先生は小児科医で、京都大学にて結核の研究、病院の勤務医を経て小児科医院を開業、1998年に逝去されています。
初めて親になる人に、やさしく寄り添った文章が続きます。
「子どもの側からすれば、あまり自信のある親は、よい親ではない。子どもといっしょに人生を探求し、いっしょにそだってくれる親がいい。」
おちつきのない子、という項目では「集団行動のできることを、子どもの発達の指標のように思って、教室で集団の統一行動ばかりやらせる先生にあたると、元気のいい子は異常児にされる。ことに子どもがぶきっちょで、服をうまくぬげなかったり、はさみが使えなかったりすると、いっそうにらまれることになる。」手がかかる子供さんの育児経験のある人でしたら、そうそう、というところでしょう。そして、こんな下りになります。「学者をあつめた集会で聴衆の席におかれると、多才有能の人ほど、貧乏ゆすりをしたり、パイプをいじりまわしたりしている。それはエネルギーのある人の宿命みたいなものだ。おちつきのない子に、おちつかそうと思って静座をさせたりするのはかわいそうだ。まして精神安定剤をのませたりするのは、天分を殺すようなものだ。」
小児科医としての観察眼にも脱帽する記載が満載です。小児科医にもぜひ読んで欲しい1冊です。


2. 完全版 シアーズ博士夫妻のベビーブック ウイリアム・シアーズ

少し前にブームになったので、結構持っている人も多いのかも。アメリカで人気の高い小児科、ウイリアム・シアーズ博士と看護師でもあるマーサ夫人による育児書の日本語版です。シアーズ博士夫妻には8人の子供さんがいて、そのうち2人(長男と次男)も小児科医になっています。特に、食事に関する情報は秀逸です。日本人の感覚だと、調子がわるいときは、おかゆ、うどん、など、どうも食指が動かないものを子供に準備しがちですが、この本のなかでは、「スムージー」を勧めています。手づかみ食べの食材も、バラエティーにとんでいます。


3. こころの子育てー誕生から思春期までの48章 河合隼雄

私は、日本のユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者である河合隼雄先生の本が大好きです。かなり難しい精神分析論は手がつかないのですが、エッセイなどは結構読んでいます。河合隼雄先生は、自分は「避雷針」をもっていて、みんなの悩みを地球に流すのが宿命なんだ、というようなことをおっしゃっています。この本は、とくに反抗期の中学生への対応に心折れそうなとき、何度も読み返しました。河合隼雄先生の、巨木に抱かれるような大きな優しさに触れることができる名著です。あとがきから一文紹介します。「自分のところにいきなりやってきたものを自分の運命としてガッチリ受け止めて、それをどう生きるか、なんです。『どうしてこんな子なの?』じゃなくて「こんな子とどう生きるか」と考えるのが自己実現です。思うようにならない子どもを受け容れるのが自己実現だ、といってもいいです。」
 
小児科学講座 藤澤泰子

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