小児科ブログ
ひとりぼっちの国際学会:初めてのチャレンジ(その2)
2025/11/01
飯嶋です。前回お話しした、20年ほど前の初めての国際学会(ワシントンD.C.)の続きです。
学会2日目。午前中のセッションに参加したものの、スライドの英文を追うのが精一杯で話の内容はほとんどわからず・・昼前にそっと会場を抜け出しました。せっかくワシントンまで来たのだからと、手にしていた「地球の歩き方 ワシントンDC」を頼りに地下鉄でスミソニアンへ。入場無料なのに手荷物検査があるという、日本では珍しいスタイルに緊張しつつ、博物館の中に入るとそのスケールに圧倒されました。
外には広くてきれいな公園が広がっており、小腹が空いたので売店でハンバーガーとフライドポテト、コーラを購入。ひたすら“指差し”注文で、その後「サンキュー」。ベンチで食べていると、どこからともなくリスが現れて食べ物をねだるように見つめてきました。フライドポテトを差し出すと、それを手にとってもぐもぐ。ハトでもスズメでもなく、リスが1mの距離で食事している光景に、なぜか胸が温かくなりました。
その後、リンカーン記念館やホワイトハウス、国会議事堂を徒歩で巡り、すっかり観光モード。ところが次第に天気が崩れ、雪がちらつき始めました(12月初旬です)。寒さと歩き回った疲れで温かいコーヒーが恋しくなり、近くのマクドナルドへ。カウンターの店員さんたちは(日本と違って)おしゃべりに夢中。ようやく気づいてもらい、「コーヒー、プリーズ」と注文したところ、渡されたのはまさかのアイスクリーム。「いや、これは違うだろう」と思いつつ、英語で言い直す勇気が出ず、そのまま代金を払い、寒さに震えながらアイスを食べました。通りすがりの人々の視線が少し痛かったです。「今日もまたやられたな・・」と苦笑しつつ、ホテルに戻りました。
3日目。午前中のセッションに出たあと、また“抜け出し”。ガイドブックで「ネイビーヤードにある海軍博物館に旧日本軍の神風特攻隊の練習機が展示されている」と知り、興味をひかれて行ってみることにしました。
地下鉄の駅を出て地上に上がった瞬間、目の前の光景に愕然。道にはゴミが散乱し、人影もまばら。「ここ・・スラム街じゃないか?」と直感しました。と、そのとき、後ろから誰かが大声で何かを叫びました。振り向くと黒人男性がこちらに向かって手を振っています。内容はわからないけれど、何となく嫌な予感がして足早に立ち去りました。そのうち、薄暗い道路のガード下にさしかかると、そこには何人ものホームレスらしき人たちが座っていて、そのうちの一人が近寄って来たときには本気で怖くなり、思わず走って逃げました。
ようやくたどり着いたネイビーヤードの入口には軍人が立っており、「ミュージアム!」と告げると指を差してくれました。案内された(と思った)建物に入ると、長蛇の列。どう見ても観光客には見えない人ばかり。「何だか様子がおかしいな」と思いつつ列に並び、自分の番になると申込書のような紙を渡されました。住所欄に日本の自宅をローマ字で書いて再び列へ。ところが、係員に書類を見せると怪訝な顔をされ、早口で何かを言われました。よく見ると、ここは“博物館の受付”ではなく、“海軍の雇用申込所”だったのです。
結局、海軍博物館にはたどり着けず、疲れ果ててホテルに戻りました。後になって、あのスラム街でトラブルに巻き込まれていたらと思うとぞっとします。日本って本当に安全な国なんだと、心の底から感じました。
ここまで読まれた方は、「学会に行ったのか観光に行ったのか」と思われたかもしれませんが、私の“国際学会デビュー”はこんな感じでした。実は、これに懲りず翌年も同じ「Hot Topics in Neonatology」に参加しています。この時はニューヨークまで足をのばし、また珍道中となって様々な体験をしました。この経験が、その後の国際学会参加のきっかけとなりました。その後はハンブルグ(ドイツ)、ポルト(ポルトガル)、・・。いつも身振り手振り・・発表の時は・・蚊の鳴くような声の(暗記した)英語・・。
こんな昔話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
学会2日目。午前中のセッションに参加したものの、スライドの英文を追うのが精一杯で話の内容はほとんどわからず・・昼前にそっと会場を抜け出しました。せっかくワシントンまで来たのだからと、手にしていた「地球の歩き方 ワシントンDC」を頼りに地下鉄でスミソニアンへ。入場無料なのに手荷物検査があるという、日本では珍しいスタイルに緊張しつつ、博物館の中に入るとそのスケールに圧倒されました。
外には広くてきれいな公園が広がっており、小腹が空いたので売店でハンバーガーとフライドポテト、コーラを購入。ひたすら“指差し”注文で、その後「サンキュー」。ベンチで食べていると、どこからともなくリスが現れて食べ物をねだるように見つめてきました。フライドポテトを差し出すと、それを手にとってもぐもぐ。ハトでもスズメでもなく、リスが1mの距離で食事している光景に、なぜか胸が温かくなりました。
その後、リンカーン記念館やホワイトハウス、国会議事堂を徒歩で巡り、すっかり観光モード。ところが次第に天気が崩れ、雪がちらつき始めました(12月初旬です)。寒さと歩き回った疲れで温かいコーヒーが恋しくなり、近くのマクドナルドへ。カウンターの店員さんたちは(日本と違って)おしゃべりに夢中。ようやく気づいてもらい、「コーヒー、プリーズ」と注文したところ、渡されたのはまさかのアイスクリーム。「いや、これは違うだろう」と思いつつ、英語で言い直す勇気が出ず、そのまま代金を払い、寒さに震えながらアイスを食べました。通りすがりの人々の視線が少し痛かったです。「今日もまたやられたな・・」と苦笑しつつ、ホテルに戻りました。
3日目。午前中のセッションに出たあと、また“抜け出し”。ガイドブックで「ネイビーヤードにある海軍博物館に旧日本軍の神風特攻隊の練習機が展示されている」と知り、興味をひかれて行ってみることにしました。
地下鉄の駅を出て地上に上がった瞬間、目の前の光景に愕然。道にはゴミが散乱し、人影もまばら。「ここ・・スラム街じゃないか?」と直感しました。と、そのとき、後ろから誰かが大声で何かを叫びました。振り向くと黒人男性がこちらに向かって手を振っています。内容はわからないけれど、何となく嫌な予感がして足早に立ち去りました。そのうち、薄暗い道路のガード下にさしかかると、そこには何人ものホームレスらしき人たちが座っていて、そのうちの一人が近寄って来たときには本気で怖くなり、思わず走って逃げました。
ようやくたどり着いたネイビーヤードの入口には軍人が立っており、「ミュージアム!」と告げると指を差してくれました。案内された(と思った)建物に入ると、長蛇の列。どう見ても観光客には見えない人ばかり。「何だか様子がおかしいな」と思いつつ列に並び、自分の番になると申込書のような紙を渡されました。住所欄に日本の自宅をローマ字で書いて再び列へ。ところが、係員に書類を見せると怪訝な顔をされ、早口で何かを言われました。よく見ると、ここは“博物館の受付”ではなく、“海軍の雇用申込所”だったのです。
結局、海軍博物館にはたどり着けず、疲れ果ててホテルに戻りました。後になって、あのスラム街でトラブルに巻き込まれていたらと思うとぞっとします。日本って本当に安全な国なんだと、心の底から感じました。
ここまで読まれた方は、「学会に行ったのか観光に行ったのか」と思われたかもしれませんが、私の“国際学会デビュー”はこんな感じでした。実は、これに懲りず翌年も同じ「Hot Topics in Neonatology」に参加しています。この時はニューヨークまで足をのばし、また珍道中となって様々な体験をしました。この経験が、その後の国際学会参加のきっかけとなりました。その後はハンブルグ(ドイツ)、ポルト(ポルトガル)、・・。いつも身振り手振り・・発表の時は・・蚊の鳴くような声の(暗記した)英語・・。
こんな昔話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
地域周産期医療学講座 飯嶋重雄




