小児科ブログ

英会話恐怖症?~国際化の波にのまれて~

2025/12/05

 飯嶋です。先日、横浜で開催された日本新生児成育医学会で、English Sessionの会場に顔を出しました。日本人の若手の先生が英語で発表し、質疑応答も英語。演者も質問者も少したどたどしいながら、必死にやり取りしている姿がとても印象的でした。私はといえば・・ヒアリング力が壊滅的で、内容はさっぱり理解できませんでしたが。
 
 近年は、韓国やヨーロッパの医学生が短期実習に来たり、中国など海外の先生方がNICUを見学に来たりと、国際化が着実に進んでいます。素晴らしいことだとは思いつつ、「英会話恐怖症(?)」の私には、どこか憂鬱な状況でもあります。以前のブログにも書きましたが、私は日常会話を含め英語がほとんど話せません。

 では、いつからこうなったのでしょうか。外国人に何かされたわけでも、嫌いになったわけでもありません。中学・高校ではむしろ英語が一番得意科目でした。きっかけは、おそらく中学か高校の頃。駅のホームで外国人が近づいてきて、私の近くに立ったとき、「もし話しかけられたらどうしよう」「何て答えればいいんだろう」と心臓がバクバク。結局、話しかけられてもいないのにその場を離れてしまいました。似たようなことがその後も何度か続きました。

 医師2年目の頃、関連病院にインドの小児科医が見学に来ることになり、病棟案内を任されました。とはいえ、私にできたのは「カモン」と言って指を示すだけ。何か聞かれても返せず、小声でもごもご。相手の先生は最後には「OK」と言って勝手に見て回り、「あぁ、見切られたな」と感じました。翌年、今度はインドネシアの先生が来られ、また案内役に。最初に「I cannot speak English well」と宣言したところ、「Me, too」と返してくれました。
お互い片言ながら、なんとなく話が通じたような気がして、心が少し軽くなりました。

 私が初めて海外に行ったのは新婚旅行で、フロリダのディズニーワールドとマイアミ。ホテルではカードキーが作動せず、事情説明に四苦八苦。マイアミでは、日本未上陸だったバーガーキングで注文がまったく通じず、ようやく出てきたコーラのあまりの巨大さにびっくり。トレイを持った瞬間、想定外の重さにひっくり返し床一面をコーラの海にしてしまいました。必死に清掃してくれた店員に小声で「サンキュー・・」。

 「やっぱり英会話ができなきゃダメだ」と思い、駅前留学のNOVAに通うことを決意。入学テストの感触では「Level 3くらいかな」と思っていたのに、結果は下から2番目のLevel 7B。実際のレッスンは「マイネームイズ〇〇」のレベルで愕然とし、2回通っただけで挫折しました。それでも諦めきれず、「家出のドリッピー」「スピードラーニング」「ヒアリングマラソン」など、ヒアリング教材を次々と購入。しかし成果はゼロ。特に「聞き流すだけで自然な英会話が身につく」と謳うスピードラーニングは、右から左に抜けていくだけで、何も頭に残りませんでした。NOVAにオンラインの「お茶の間留学」システムができたことで再びトライした矢先、今度は経営破綻。授業料も戻らず散々でした。気づけば、英語教材のCD付きテキストは30冊以上。しかし、買っただけでほとんど使いませんでした。

 その後、国際学会に参加するたびに英語の壁にぶつかり続け、やがて悟りました。日常生活で、意外と他人と話さずに過ごす時間が多い。海外でも、英語圏であろうがなかろうが「ハロー」「サンキュー」さえあればどうにかなる。そう気づくと、気持ちがぐっと楽になりました。

 ・・とはいえ、病院に外国人の先生が見学に来ると聞くと、今でもつい隠れたくなる自分がいます。やはり・・英語が話せるとカッコいいですけど・・
地域周産期医療学講座 飯嶋重雄