小児科ブログ

国内留学の魅力

2026/07/21

こんにちは。医師9年目、内分泌グループの金子拓弥です。
 
私は2018年に昭和医科大学を卒業後、地元・静岡県で初期臨床研修を行いました。
2020年に浜松医科大学小児科へ入局し、関連病院で研鑽を重ねた後、2024年から神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科へ国内留学しました。
 
今回は、私が実際に体験した「国内留学の魅力」についてご紹介したいと思います。
 
「留学」と聞くと、多くの方は海外留学を思い浮かべるかもしれません。「語学が必要そう」「海外での生活は大変そう」「費用がかかりそう」といった不安を感じる方もいるでしょう。
 
一方、国内留学とは、日本国内の別の医療機関で一定期間研修を行い、新しい環境で診療や研究を学ぶ機会です。言葉や生活環境への大きな不安が少ない一方で、新たな知識や経験を得られることが大きな魅力だと私は感じています。
 
より多くの症例を経験できる
 
多くの医師は医局に所属し、大学病院や関連病院で診療を行っています。浜松医科大学小児科では県内17の関連病院で幅広い診療に携わることができます。一方で、人口の多い都市圏には希少疾患や高度専門医療を担う施設が集まっており、経験できる症例の幅にも違いがあります。
 
私は若いうちにできるだけ多くの症例に触れたいと考え、小児内分泌学会理事である藤澤先生にご紹介していただき、大都市圏である神奈川県で唯一の小児専門病院である神奈川県立こども医療センター(以下神奈川こども)で研修する機会をいただきました。
 
神奈川こどもには、地域の中核病院として県内外から多くの患者さんが紹介されます。また小児専門病院として多くの診療科を有し、小児集中治療室(PICU)も備えていることから、重症例や専門性の高い症例も数多く集まります。
 
神奈川こどもでの研修中は重症DKA(糖尿病ケトアシドーシス)の対応だけでなく、尿素サイクル異常症、メチルマロン酸血症などの代謝管理、性分化疾患の性別決定など市中病院ではなかなか経験することが少ない症例を経験することができました。また週に1回の院内カンファレンスでは、他診療科の珍しい症例をについても学ぶ機会がありました。
 
これまでに勤務した施設と比べて小児内分泌疾患を診療する機会が非常に多く、短期間で幅広い症例を経験できました。指導医からも市中病院の約10倍、大学病院の約3倍の症例を経験できると伺いました。
 
「百聞は一見に如かず」、そして「百見は一行に如かず」
 
「百聞は一見に如かず」ということわざをご存じでしょうか。何度も人から聞くより、一度自分の目で見る方が確かで理解しやすいという意味です。
 
さらに、その続きとして「百見は一行に如かず」という言葉があります。これは見聞きするだけではなく、自ら行動し実践することで、より深く理解できるという考え方です。
 
教科書や論文から学べる知識はもちろん重要です。しかし、患者さん1人ひとりの背景や、治療の副作用への対応、生活上の工夫などは、実際に診療して初めて学べることが少なくありません。
 
少子化により小児患者数は今後減少していくことが予想されます。そのような時代だからこそ、限られた研修期間の中で多くの症例を経験できることは、大きな価値があると感じています。
 
新しい土地で生活する楽しさ
 
国内留学には、診療だけでなく、新しい地域で生活できるという魅力もあります。
 
医師にとって住む場所が大きく変わるタイミングは、①大学進学、②初期臨床研修、③医局入局の3回が一般的です。特に医局に入局すると、勤務先はある程度決まるため、新しい土地で暮らす機会は以前より少なくなります。
 
そのような中で、国内留学は新しい地域で生活を経験できる「第4のタイミング」とも言えるかもしれません。
 
私は大都会横浜駅周辺に住み、休日には朝のみなとみらいをランニングしたり、夜には野毛(桜木町駅周辺の飲み屋街)で個性豊かな飲食店を巡ったりと静岡とはまた違った街の魅力を存分に楽しむことができました。
 
その経験がきっかけで街歩きや飲食店巡りが好きになり、現在は浜松駅周辺で、1人飲みできる居酒屋さんや美味しいご飯屋さんなど探すことを楽しんでいます。
 
おわりに
 
国内留学は、海外留学と比べて生活環境の変化による負担が少ない一方で、多くの症例や新しい考え方に触れ、自分自身を大きく成長させることができる貴重な機会です。
 
私自身、今回の国内留学で得た経験は、診療技術だけでなく、医師としての考え方や視野を大きく広げてくれました。
 
もし国内留学に興味がある方がいれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。新しい環境で得られる経験や出会いは、きっと今後の医師人生の大きな糧になるはずです。
 
浜松医科大学小児科は、国内留学を含めて一人ひとりのキャリア形成を応援しています。
 
                             小児科学講座 金子拓弥